加納総合病院

ハートフルグループ

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形成外科

診療科の特徴

 形成外科がどんな科か分からないと思っておられる方も多いかもしれません。
 形成外科は、頭からつまさきに至るまであらゆる部位の多くの疾患(病気、けが、先天性)に関連した訴えに対応する科です。当科でも幅広い疾患を取り扱っております、どの科に受診していいかわからないという方は一度ご相談されてください。

診療内容
1. 皮膚のできもの
2. 瘢痕・ケロイド
3. 眼瞼下垂・眼瞼内反症(逆まつげ)・眼瞼外反症
4. 熱傷(やけど)・熱傷痕
5. 顔面骨折・顔面外傷
6. 腋臭症
7. その他
8. 自費診療
 コラム1:皮下異物
 コラム2:フェノール法

ドクター紹介

1. 皮膚のできもの

 皮膚のできものには多くの種類があります。イボ・粉瘤・脂肪種・ほくろなどの良性のものから、悪性のものまで様々です。一見ただのほくろや傷の様に見えるものでも切除した結果、悪性腫瘍(皮膚がんなど)と診断されることもあり、気になった場合は一度診察を受けることが大切です。特に顔面などの整容に関わる部分の切除や、皮膚の欠損範囲が大きくなりやすい悪性腫瘍の切除などは専門的な治療が必要となります。また、当科では切除以外にもCO2レーザーなども積極的に用いて治療を行っています。単純な切除やレーザーを用いた処置の場合は、外来診療の空き時間によっては当日施行することも可能です(難しい場合もあります)。ご相談ください。


粉瘤:皮膚を一部つけて摘出します。


脂肪腫:通常は浅筋膜という皮下脂肪レベルにありますが、図の様に筋肉内にできることもあります。


基底細胞癌:首にあったイボに傷ができたと来院されました。悪性を疑い切除したところ、基底細胞癌という皮膚癌と診断されました。

2. 瘢痕・ケロイド

 残ってしまった傷跡(瘢痕と言います)でも、治癒後早期であればケア次第で状態を変化させることができます(傷跡を消すことはできません)。治癒後時間が経過して固定された傷跡(成熟した瘢痕と言います)は、ケアのみでは改善が難しい恐れがあります。その場合は手術による修正術の適応となります。
 傷跡による訴えが整容面など見た目の問題の場合は、きれいに縫い直す、W形成術(わざとジグザグに傷を縫い直すことで、細かいしわに傷の一部を隠す手術法です)を行うことがあります。ひきつれなどの場合はZ形成術(直線の傷に三角形をはさみこむことで、ひきつれを分断する手術法です)や植皮術(皮膚を他の部位から採取して移植します)、皮弁術(ひきつれの近くの皮膚と脂肪をずらして来て移植します)などによりひきつれを改善することが出来る場合があります。
 さらに、ケロイドという元々の傷を乗り越えて隆起する病態があります。病気というよりは体質に起因するものと考えられており、単純な切除だけでは再発することが多いと言われています。基本的な治療法は①圧迫(テーピング、スポンジ、シリコンシートなど)②ステロイド(外用、貼付剤、注射)③切除+ステロイドや電子線(電子線治療は当院では行っておりません。)です。肥厚しているだけの瘢痕との区別は難しいと思われますが、かゆみや痛みを伴うこともあり、気になるようでしたら一度ご相談ください。

3. 眼瞼下垂・眼瞼内反症(逆まつげ)・眼瞼外反症

 コンタクトや加齢によってまぶたが下がる病気を眼瞼下垂といいます。これは頭痛や肩こりの原因になることもあり、自覚症状がない場合でも眉を上げることでまぶたの皮膚を持ち上げ、代償した潜在性眼瞼下垂であることもあります。眼瞼下垂の原因を多いもので二分すると①まぶたの皮膚の余剰によるもの②まぶたを上げる筋肉と筋膜のゆるみによるもの、があります。①の様にまぶたの皮膚が余って目まで垂れ下がっている場合は、その余った皮膚を切り取ることで改善することがあります。その際多くは眉毛の下を切ります(余剰皮膚切除といいます)。②まぶたを上げる筋肉がゆるんでいる場合は、ゆるんだ筋肉を引っ張り出して来て、目の際の軟骨(瞼板といいます)に縫い付け直します(挙筋前転術といいます)。

①余剰皮膚切除術
 

皮膚が余っている部位を特に重点的に切除するデザインをします。まぶたの皮膚は薄くしなやかであり、二重のラインで皮膚をあまり取りすぎると、頭側の厚い皮膚がまぶたの方に来ることになり不自然になるため、我々は主には眉毛の下で皮膚を取るようにしています。

実際の症例

 

 

術前:外側の余剰皮膚が目立ちます

術後1カ月:開瞼は良好です

②挙筋前転術
  

眼瞼挙筋とはまぶたを引き上げる筋肉です。実際には、まぶたのきわの瞼板という軟骨組織に、挙筋腱膜という薄い組織でつながって目を開けています。眼瞼下垂には様々な原因がありますが、多くは加齢、コンタクトの装着脱などでこの挙筋腱膜がゆるんで後退して起こります(これを腱膜性眼瞼下垂といいます)。本手術方法では、そのゆるんだ腱膜を一度周囲から剥がして前方に引っ張ってきます。そしてやや前進させた状態で瞼板に糸で再固定することで良好に目を開かせることができます。切開部は二重のラインとして利用し、傷跡が見えにくいようにするので、原則この手術では二重になります。

実際の症例

 

 

術前:中等度の下垂を
認めます

術後:下垂は改善し、
眉毛から力が抜けています

 ①と②の両方を合併していることも多くありますが、まずどちらかの手術を行います。さらに手術を希望される場合は両方の手術を行うこともあります。眼瞼下垂と診断されれば保険適応での加療が可能です。日帰り局所麻酔での手術を行っておりますが、ご自宅で安静が難しい、当日の夜が不安、など希望ありましたら入院下での手術も行っております。抜糸まで入院される方もおられます。

 逆まつげなどの眼瞼内反症、もしくはその逆の眼瞼外反症の手術も行っております。逆まつげは眼科でまつげを抜くことで経過をみられることもあるかと思いますが、定期的な受診が必要となり成人例のほとんどは根治には至りません(一方、小児の逆まつげは経過観察で改善することが多いです)。手術適応となることもありますので、気になるようでしたら一度ご相談下さい。

 当科では眼瞼手術にAmco社の高周波電気メス【エルベ】VIO50Cを使用しております。眼瞼の手術は術後腫脹が起きることが多いですが、腫脹の最たる原因は出血にあると考えられますので、高周波電気メスにより出血を最低限に抑える試みを行っております。また、通常の電気メスより周囲の組織の損傷は少なく、低侵襲な手術を行うことが出来ます。

4. 熱傷(やけど)・熱傷痕

 熱傷を受傷した場合は、すぐに流水で30分以上冷やしてから当科を受診してください。
 熱傷には大きく分けて3段階の程度があり、各段階によって治療方法が大きく変わり、時には手術が必要になることもあります。受傷直後に一見浅そうな熱傷でも、治療経過中に深くなり治癒までに長時間を要することも多くあります。特に、細菌などが混入して感染を起こした場合はこの増悪の程度が一気に大きくなることもあり注意が必要です。少なくとも水膨れが出来るような熱傷で範囲が広いと思われた場合には、一度外来の受診をおすすめします。熱傷が酷い場合は水膨れがすぐに破けてできていないように見えることもあり注意が必要です。その場合は下の皮膚の一部が白くなったり、火炎熱傷の場合は黒くなることもあります。
 また、熱傷の治癒後には醜状痕と言われるような、整容的に気になる傷跡を残す場合や、ひきつれを起こすことがあります。傷跡の整容面やひきつれの改善を希望される場合も加療適応となりますので当科を受診ください。

5. 顔面骨折・顔面外傷

 顔面の骨折やけがは、見た目に直結することから形成外科で扱います。骨折を伴うと、場合によっては物が二重に見えたり、口が開きにくくなったり、皮膚がしびれたりなどの症状が伴います。これらは手術により改善する可能性があります。

 

 

術前CT:特に上顎の変形が
目立ちます

術後CT:良好に整復され、
プレートで固定されている

※当科ではチタンプレート以外に、吸収性プレートの使用もしております。

また、顔のけがについては、初めに行う処置でその後の傷跡の状態が大きく変わります。「できるだけきれいに治したい」「救急病院で縫ってもらったけれど心配」などございましたら、受傷後早目に当科を受診してください。

6. 腋臭症

 わきのアポクリン汗腺が原因で臭いが発生すると言われています。欧米では生理現象として許容されているところがありますが、日本を含め東アジアでは欧米よりは少数であることもあって悩みの種になることがあります。超音波マイクロ波などを用いた治療機器の有効性が昨今報告されています(当科では行っておりません)が、他にも外用液やボトックス注射などの保存的治療、アポクリン腺を直接目視下で除去する手術(皮弁法:保険適応)などは治療法として挙げられます。手術は局所麻酔で可能ですが、出血による血腫形成の予防などのために原則入院加療をおすすめしています。

皮膚の脂腺と汗腺 臭いの元となるアポクリン汗腺   
皮弁法:腋窩中央を切開し、皮膚を反転し特に色が黒っぽく見えるアポクリン汗腺を狙って切除します。

7. その他

 動物咬傷、刺し傷(枝・釘など)、床ずれ(褥瘡)、下肢潰瘍、陥入爪などの治療も行っております。

8. 自費診療

しみ

 顔面などにある茶色い色素斑は、「シミ」と一言で表されることが多いですが、実は、老人性色素斑、脂漏性角化症、ほくろ、炎症性色素沈着、そばかす、肝斑、後天性真皮メラノサイトーシス、太田母斑、扁平母斑等、原因や病態はさまざまであり、治療法も異なります。当科では、診察の上、それぞれの「シミ」に合った治療法をご提案させていただき、患者様とご相談しながら、治療を進めて参ります。当科では、Qスイッチアレキサンドライトレーザーによるシミ治療を行っています。このレーザーは、黒色・茶色の色素斑を薄くするのに良い効果を発揮します。医療機関でのみ販売されているドクターズコスメのゼオスキンやハイドロキノンの外用、ビタミンC・トラネキサム酸の内服等による治療も行っております。「シミ」にお悩みの方は、一度ご相談ください。

脱毛

 当科では、GentleMax Proレーザーによる、医療レーザー脱毛を行っております。  ムダ毛の自己処理の手間やかみそり負けのため、エステ脱毛や家庭用脱毛器等で脱毛をされている方も多いかと思います。医療レーザー脱毛は、エステ脱毛や家庭用脱毛器による脱毛よりも、少ない回数で脱毛効果を得ることができます。近年では、男性のヒゲ脱毛や、思春期以降の若い多々の脱毛も増加しております。当科では、医師による診察後、レーザーを照射させていただいております。毛量が少ない方は5~6回程度の照射で完了することもありますが、個人差があるため10回以上かかる方もいらっしゃいます。1回ごとのお支払いのため、必要な時に必要な分だけレーザーを受けることができます。  

しわ

 おでこ、眉間、目尻などのしわは、表情筋によるものであり、ボツリヌストキシン注射により表情筋の動きを止めることで、表情じわが改善するだけではなく、定期的に施術を受けることで、将来しわが深く刻みこまれることを抑制することができます。当科では、アラガン社のBotox🄬を使用しております。 また、小じわやキメ、ハリ、たるみ毛穴を改善させる目的で、当科ではロングパルスNd:YAGレーザーによるリフトアップレーザーも行っております。

腋窩多汗症(わき汗)

 夏になると不快なわき汗を、ボツリヌストキシン注射(アラガン社のBotox®)により軽減させることができます。1回の注射で3~6か月効果を得ることができます。冬でもお困りの多汗症の方は、夏・冬と年2回注射を受けていただけることもあります。自費診療に関しましては、医師がカウンセリングを行い、治療に関して詳しく説明させていただきます。十分にインフォームド・コンセントを行い、納得された上で治療を始めさせていただきます。一度、ご相談下さい。 ※初・再診料および投薬料等は別途必要です。 ※費用は健康保険適応外のため自己負担となります。

コラム1:皮下異物

右第1趾にわずかな傷跡があり、続く疼痛を主訴に来院されました。撮影したレントゲンでは、関節近くにこの様な形態の異物を認めます。

手術室にて傷跡から切開を延長して皮下を探索すると、元の傷跡は1mm程度のものでしたが、少し離れた部位になんと1cmの長さのガラス片が埋まっていました。自宅で割れた水槽のガラス片が足に刺さり、傷跡も小さく当初は抜けたかと思われていたようですが、疼痛が続き異物が残っているのではないかとご自身で疑って受診して下さいました。ガラス片などの鋭利なものは、深部まで刺さることもあり透明なのでご自分で見つけることはまず難しいです。また、途中で折れてしまうと、摘出が難しくなることも考えられます。そういったエピソードや違和感があれば遠慮なくご相談ください。

コラム2:フェノール法

フェノール法とはなんでしょうか?陥入爪の治療法の一つです(陥入爪とは巻き爪などで爪が皮膚に食い込んで疼痛の原因となっている病態です)。陥入爪の治療に関しては、テーピング、コットンやシリコンチューブのパッキング、プレートやワイヤーでの矯正など様々な保存的治療法がありますが、外科的治療法の一つにフェノール法があります。フェノール法に関して簡単にご説明させていただきます。 ①まず手や足の指のつけねに麻酔の注射を行い、処置する指や足全体に麻酔を行います(指先に直接針を刺して麻酔をするのは非常に強い痛みを伴いますので、この様な方法を用います)。 ②陥入している部位の部分抜爪を行います。この際に爪の根本まできちんと処理できていることを確認します(ここが不十分ですと、この後塗布するフェノールが目的の部位まで届かなくなります)。 ③次に抜爪を行った部位から爪母と呼ばれる爪を作る部分にフェノールを塗布します。爪母を化学的に処理することで、陥入する部位だけ二度と爪が生えなくなるという理屈です。このフェノールには組織の障害性があるので、薬品が残存しない様に最後に無水エタノールで洗って不活化させます。※フェノールには痛覚に作用して軽減する効果もあると言われており、術後の疼痛も従来の外科手術に比べると軽度です。 ④翌日から出血などなければシャワー浴を原則許可しております。個人差はありますが、2週間程度は浸出液が少量出ます。市販のカットバンなどでも吸収可能な量です。 *小範囲ですが傷ができますので、末梢循環障害などで血流が低下している方は施行が難しいことがあります。重度の糖尿病や免疫不全状態など、同様に難しい方がおられます。 理屈上同部位での再発はないはずですが、ごくまれに再度爪が伸びてくることや残存した爪が変形してきて再陥入することは考えられます。

 

 

爪陥入部が疼痛の原因

爪を根本まで部分抜爪
綿棒先端にフェノール液

爪母をフェノールで灼く

 

 

図で左側が陥入部

陥入部を奥まで部分抜爪

フェノール処置後
わずかに爪の幅が狭く

ドクター紹介

医長 / 北口 陽平(きたぐち ようへい)

日本形成外科学会 専門医・指導医

医員 / 奥野 涼子(おくの りょうこ)

形成外科の診察担当医表